みんなの工作博物館へ寄贈された「【匠の技】小型ICルーレット」。
動画はこちら。
1. 回路図を基にどんな感じで配置するか考える。
回路の各種接続はこの図のようになっています。分かりやすくするために、IC一つで完結するものをひとまとめとして書いています。逆に、別の部分につなげる内容についてはアルファベットを記述しています。例えば、AはAと接続、BはBと接続、……etcといった形で同じアルファベット同士を接続してください。
2. 考えた配置を基に実際にはんだづけする。
私は1の図を基にそのまま配線を考えながら配線しましたが、エクセルで正方形のマス目を印刷した紙や方眼紙などを使って、配線図を自分で書いてそれに従って配線して頂いても良いです。
ジャンパー線については線の材質として比較的硬く終端処理が既に行われているのでそのままはんだづけすることも可能なブレッドボード用ワイヤを用いています。本来の用途はその名の通りブレッドボードで使うものですが、今回はなるべくお手軽に出来るようにしたいと思い、それを選択しました。
取付途中
完成した回路の表面
完成した回路の裏面
3. 配線の注意点
コネクタ取り付け
コネクタ部分は基板の一番外につけるのではなく最低1マスはあけて配置しましょう。その上で基板と引っ付くようにして、きちんと固定しましょう。
電源のON-OFFスイッチ
電源のONとOFFを切り替えるスイッチは基板と引っ付くように固定します。これが浮いていると切り替え動作を繰り返していくうちにどこかが折れてしまうかもしれません。赤丸で囲んでいる三端子が切り替えに関わっている部分です。このうち、ON/OFFの切り替えが出来る2ピンの組み合わせを配線のしやすさに合わせて選択して使ってください。
もう一個の余り1端子ははんだ付けで固定するための端子と思って頂いて大丈夫です。
ICソケット
ICソケットは上となる方向の場所が赤丸のように半円に削られています。なので、考えた配線に合わせて配置するようにして下さい。ICソケットを使わず、ICを直接はんだ付けすることも出来なくはないですが、はんだごてを当てすぎてしまったり、何かの拍子に壊してしまった時に交換がしにくいので、利用することにしました。
実際にICをソケットにはめる時はICにも同じような半円に削られた部分があるのでそれを参考にはめれば向きを間違えることはありません。
ルーレットを回すボタン
ルーレットを回すボタンとなるスイッチは写真のようにコネクタが既に取付済の信号線をはんだ付けします。
赤と白は入れ替わっても支障はありませんが、スイッチの取り付けている端子は間違えないように注意して下さい。
LED
LEDやコンデンサにはプラスマイナスが存在していて、これを間違えると正常に動作しません。
基本的にどちらもプラス側の端子は長く、マイナス側の端子は短いです。
例えば、LEDでは赤で囲んだ部分がプラス側、すなわち配線として言えば抵抗と接続している側となります。
4. 組み立て
配線が終わったら残すは組み立てだけです。ただ、組み立てる前にもう一度回路が正しいかを確認しましょう。
以下のことは必ず確認しましょう。
・IC周りの配線間違っていませんか?
ICはあくまで上から見た図なのではんだ付けする裏面で見ると勘違いを起こしやすいです。
・LEDやコンデンサなど極性があるものの向きは間違えていませんか?
極性があるものは正しく配置しないといけません。
・プラスとマイナスなど本来接触してはいけない箇所が間違って繋がっていませんか?
はんだづけは密度が高くなってくると、誤ってはんだ同士が繋がってしまうこともあるので注意です。
・
特に問題なさそうなら組み立てていきましょう。
まず電池ボックスを両面テープでアクリル板に貼り付けます。
ケース組み立て時は、六角同士をそのまま二段重ねして高さを上げてしまうと高さにずれが生じます。
これはおそらく大量生産品なので、ねじの深さが微妙に異なっているからだろうなーとは思います。なので、ナットを間に挟みます。個体差ではあるかと思うので、物によってはなしでもいけるかもしれません。ただ、高さ的にもナット一枚追加した方が丁度良い高さにはなるので、追加してもらえると良いと思います。
上から順番に、ナット、アクリル板、ねじ、基板、ねじ、ナット、ねじ、アクリル板、ねじの順に配置しています。高さについてはお好みで変更しましょう。
5. 完成
あとは綺麗に掃除だけしてしまえば、これで完成です。
動画はこちら。
動画の通りにスイッチを押している間、ルーレットが回り続けスイッチを離すと、止まります。
材料
合計2500円程度。すべて秋月電子で買い揃えられるようにしています。
・工夫点
今回、回路を作っていくにあたってチャタリング対策としてシュミットトリガーを追加しました。チャタリング対策をマイコン等で行う場合は、
- ①入力検知
- ②10[ms]待機(短い時間待機)
- ③入力再確認のように2回確認
することによって簡単に実装出来ます。
それこそ遅延とif文を追加するだけなので2行程度しかプログラムは変わりません。今回はそういった物を使わず、回路として対策できたらと思い追加しました。
今回の回路は仕組み上、配線する箇所はどうしても多くなってしまい、複雑になってしまうことは避けられませんでした。そのため他の部分ではお手軽に出来るように気を付けて作ってみました。ジャンパー線は終端処理をしなくてよく配線もしやすいブレッドボードのワイヤを使用しました。
そして、ドリル等がなく加工が困難だという方でもはんだごてさえあれば製作できるようにしました。
さらに部品についても複数の通販サイトから購入すると送料が占める割合が大きくなってしまい勿体ないので一つの通販サイトで購入できるように選定を行いました。
・感想(未来のメイカーのみなさんへ)
久しぶりの電子工作で、結構私自身楽しみながら作らせてもらいました。
久々に行ったはんだ付けはちょっと下手だったかもしれませんが、また徐々に感覚を取り戻していきたいなーと思っています。
昔はあったけど、今では生産されていないような素子をどのように現代の素子として作っていくのか考えるのは楽しかったと思いますし、作りやすく安定したものを目指して改善を加えてみるのもまた面白かったので良い経験となりました。
回路は好きで作りたい。けど家にドリルもなければ、ボール盤やのこぎりもない。もしくはあっても音がうるさいから使いづらいというそんな人もいらっしゃるかもしれない。
結論として、筐体が作れない。筐体はなくてもいいけど、ないと見栄えがなぁ……と悩ましく思ったり。実は製作者本人もそんな人です。なので、今回は加工不要で組み立てて、カスタマイズも可能な筐体を提案させてもらいました。
今回の工作では、はんだごてさえあれば作れます。はんだごては使用後必ず電源を切る、バランスの悪いところに置かない、目を離さない、やけど(火事)に注意するなどといったことにさえ気を付けていれば大丈夫で、音もしませんから場所を選びません。
この記事をきっかけに回路づくりを楽しんでもらえれば幸いです。
この工作の参考資料
やさしい工作シリーズ「小型ICルーレット」、子供の科学(誠文堂新光社)、1977年12月号、pp.107-109。
Maker’s Club蔵書
作った人
平間、20代、情報系技術者。
Maker’s Clubからのおしらせ
夏休みの自由工作の無料支援のご案内
このICルーレットの作り方が載っている参考資料と、この匠の資料を両方見れば、
夏休みの自由工作はばっちりですね。
でも、この説明書は、少し、、、とても?難しく感じるかもしれません。
でも、メイカーを目指すみなさんは、いつの日か、この匠のように、こんな図や文章を書きながら、素晴らしいものを創り出すのだと思います。
匠の、こどもメイカーを思う気持ちに感動したMaker’s Clubは、この夏、みなさんの夢の一歩を応援します。
この「ICルーレット」工作にチャレンジしようというメイカーたちを、Maker’s Clubメンバーかどうかは関係なく全面的に応援します。もちろん、無料です。
作ってみたい!と思った、あなた。ぜひ、お問合せサイトから、どうぞご連絡ください。