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夢へのバトン「不思議の勝ち負け」

「夢へのバトン」シリーズ
技術者から、未来のメイカーへのメッセージをお届けするシリーズです。技術者の日常や情熱、思いを味わってください。

2020.03.11.
元 重工業会社 研究員・毛利 勝一

「サイエンスは裏切らない。」は、その後の技術者人生において自分への教訓になりました。

野球の名監督の野村克也さんの言葉


往年の名捕手、名監督、名野球解説者であった野村克也さんが亡くなられました。「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。」という名言を、野村克也さんはある剣術書から引用されています。「負け試合だった場合には、何の理由もなく負けたわけではなく、その試合中に何か負ける要素があったのであり、その要素を消さねばならない。」という意味です。もちろん、勝ち試合だったらすべていいというわけではありません。

結果だけでなく、「なぜそうなったか?」が大切


「物理とか理科の実験の時にうまくいかないとしたら、その実験の条件、過程に何か不都合なことがあるはずだ。その不都合を探して改善しなさい。」と、私には聞こえます。逆に、「実験結果が格段に素晴らしい結果を示したときに、単純にこれはすごい、すごい結果を出したのだ、というだけで終わるのではなく、実験条件に想定との違いがないかどうか、再度実験したら同じ結果になるのかどうかを検証しなさい。」とも聞こえてきます。

トラブル発生!約1万個の製品をすべて交換!


ところで、30年以上前のことです。
製品がトラブルを生じ、納品した約1万個の製品をすべて交換せねばならないということがありました。

周囲の反対の中、唯一の上司の応援で、新しいアイデアを実行

それまで関与したことのない製品でしたから、先入観なしに製造技術を見直すことができました。

見直しますと、処理時間が大変短く、安定した処理にならないであろうから、製品が均一とならないであろうという工程がありました。

実はその工程が最重要でした。処理時間を長くすることで安定した工程にするという提案をしました。

 従来の製造工程を丁寧にやり直せばよいと主張する、その製品に従来から関与してきた技術者と製造担当者からの大きな反対に対し、「貴方の提案通りの製造工程で進めなさい。もしもの場合の責任はとる。」と唯一いっていただいた上司の強い後押しを受けて、約半年間の製造に入りました。

 順調にすすめて当たり前、おかしな傾向はあるはずがないと信じつつも、最初の頃は「サイエンスは裏切らない、サイエンスは裏切らない。」と念仏を唱えていました。それから約半年の製造を終えて、製品が納入され、その後にトラブルがなかったと知り安堵しました。

工事がすみ、当初大反対をしていた方々からもお礼を言われて、ほっとしたのですが、聞けば、私が提案した製造工程は1案としてそもそもあったそうです。しかしながら、従来の製造方法ですと処理時間がとても短くてすみますから、製造期間の短縮によりコストダウンにもなるとのことで、採用されなかったそうです。

私が担当した当時、ロータス123というデータ処理ソフトが世の中に出た直後でした。製品ロットの1回1回の処理時間、処理温度、処理前後の重量を計測して製造工程を管理しました。もし、異変があった場合には原因が何かをつかむための歯止めでした。

「サイエンスは裏切らない。」

 「サイエンスは裏切らない。」は、その後の技術者人生において自分への教訓になりました。

「ひょっとしたら、危惧せずとも、順調にいくかも。」と安易な判断をして失敗した時など、教訓を忘れてしっぺ返しを食らったことを恥じました。

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし。」名言です。

 

毛利 勝一氏。
40年間重工業会社へ勤務、退職後は日本鋳造工学会関西支部の活動などを支援。
専門は、鋳造工学。

#夢へのバトン

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