【CYT活動報告】からくり工作ワークショップは、どのようにつくられたのか

【CYT活動報告】からくり工作ワークショップは、どのようにつくられたのか

企画・設計・試作・改良を重ねた若手会CYTの挑戦

2025年12月6日、KOKORO-NET in KOBEとの共催により、「からくり人形に学ぶ日本文化体験ワークショップ」を実施しました。
このワークショップの工作パートを担ったのが、NPO法人メイカーズクラブ若手会CYTです。

当日、参加者の皆さんが取り組んだのは、歯車とゼンマイで動くからくり工作。その裏側には、若手メンバーによる約半年間の試行錯誤がありました。

この記事では、3月にCYT活動報告会でCYTメンバーによって報告されたスライドを抜粋活用しながら、若手会CYTの挑戦の裏側を紹介します。

6月、教材開発はテーマ案出しから始まった

CYTの取り組みは、2025年6月29日の「教材開発のテーマ案出し」から始まりました。

その後、7月6日にテーマは「ゼンマイ式で動く乗り物」に決定。8月には試作品の進捗確認やキット作成、9月には試作品の組み立て、10月には当日の流れやスライド作成、そして10月25日には交野市で小学生向けの「わくわく秋の工作教室」を実施しました。最終的に12月6日のKOKORO-NET in KOBE共催イベントへとつながっていきました。
スライドでは、この流れがタイムラインとして整理されています。

最初は「ゼンマイ式で動く乗り物」から始まった教材が、試作と対話を重ねる中で、国際交流の場にふさわしい「日本文化を伝える工作」へと変化していきました。

1号機:歯車とゼンマイで動く乗り物

最初の設計を担ったのは、石田大輔さんです。

1号機は、歯車とゼンマイを使った乗り物として設計されました。歯車とゼンマイを使うことを「日本的なものづくり」の要素として捉え、3つの歯車をかみ合わせることで走行に必要な力を確保しました。また、フレームにはパーツを自由に取り付けられるようにし、参加者がデコレーションを楽しめる工夫も盛り込みました。

この段階では、教材としての面白さと、工作後に自分らしく飾れる自由度が大切にされていました。

一方で、実際に教材として使うことを考えると、設計図上では見えにくい課題もありました。部品の数、3Dプリンタでの印刷時間、組み立てやすさ、安全性。工作教室で使う教材には、「動く」だけでなく、「参加者が時間内に作れる」「安全に扱える」「説明しやすい」という視点が必要になります。

2号機:作りやすく、安全にするための改良

石田さんは、修士2年生で修士論文のための研究が忙しくなり、彼のコメントをもらいながら、大学1年生の中谷亘佑さんが1号機をもとに改良を行いました。

2号機では、同じ形のパーツを多く使うことで部品数を削減しました。また、1号機では角が鋭く印刷される部分があったため、面取りをして鋭い角を減らし、けがのリスクを下げました。さらに、ゼンマイを回すツマミと軸は、設計上わずかに高さの差があったため、印刷を安定させるために分離しました。

ここで大切だったのは、単にかっこよい模型を作ることではありません。
子どもや海外からの参加者が、限られた時間の中で楽しく完成できる教材にすることでした。

「3Dプリンタでの印刷の効率化」「部品数の削減」「面取りによるけがリスクの低下」。これらは一見地味な改良ですが、ワークショップを成立させるためには欠かせない工夫です。

小学生親子向け教室で見えてきたこと

10月25日には、MC正会員の小学生親子ネットワークの力を借りて、小学生親子10組を対象に、CYT主催の「ばねとゼンマイの車工作教室」を実施しました。1号機を使って工作教室を行い、車体部分に工夫できる要素を盛り込みました。この試行の場は、本番に向けた大きな学びの機会となりました。

  • 参加者がどこで迷うのか。
  • 説明のどこが伝わりにくいのか。
  • 部品は扱いやすいか。
  • 時間内に完成できるか。

実際に子どもたちが作る様子を見ることで、設計だけではわからない課題が見えてきました。CYTのメンバーは、その気づきを次の改良につなげていきました。

「車づくりは日本文化交流なのか」という問い

その後、KOKORO-NET in KOBEとの打ち合わせの中で、重要な問いが投げかけられました。

「車づくりが日本文化の交流?」

この問いは、教材の方向性を大きく変えるきっかけになりました。

単にゼンマイで動く車を作るだけでは、国際交流の場で「日本文化」を伝える教材としては弱いのではないか。
では、歯車やゼンマイを使いながら、日本のものづくり文化をどのように表現できるのか。

CYTは、この問いを受け止めました。

3号機:茶運び人形をヒントに、からくりへ

最終設計では、江戸時代のものづくりや茶運び人形に着想を得て、ゼンマイ車を「からくり工作」へと発展させました。

3号機では、ゼンマイ車と茶運び人形の共通点に注目しました。どちらもゼンマイで動き、縦にしたときの重心が中心に近く、安定性があることがわかりました。そこで、人形の頭部用のアタッチメントや、立った状態で走行するための車輪を加え、より「からくり人形」に近い構造へと変更しました。

スライドの「最終設計までの変更点」

教材の方向性は次のように整理されます。

  • 異文化交流
    → 日本文化の紹介
    → 日本のものづくり紹介
  • 江戸時代のものづくり
    → ゼンマイと歯車の工作
  • 歯車とゼンマイで動く車の工作教材開発
    → 茶運び人形をヒントにした立位走行用アタッチメント開発

この変化は、CYTが単に依頼された工作を準備したのではなく、目的に合わせて教材の意味を考え直したことを示しています。

当日:緊張から友好へ

12月6日の本番では、外国人研究者、留学生とその家族を対象に、兵庫国際交流会館でワークショップを行いました。KOKORO-NET in KOBEとの共催、神戸大学グローバル教育センターの協力のもと、CYTは教材開発から当日の進行、15名のメンバーによるマンツーマンの工作サポートまでを担いました。当日の流れは、スライドで「ワークショップ・ジャーニー:緊張から友好へ変化」と表現されています。

Step 1はアイスブレイク。

けん玉などの披露で、会場の緊張が一気にほどけていきました。

Step 2は工作への没入。

歯車とゼンマイを組み立てる作業では、手振りや笑顔が言葉の壁を越えました。

Step 3は驚き。

伝承人形の実物デモでは、ユーモラスな動きに笑い声が生まれました。

Step 4は共創と歓喜。

折紙でのデコレーションを加え、互いの作品を称え合う拍手が起こりました。教材を通して、参加者の表情が「緊張」から「集中・没頭」、そして「驚き・笑い」「歓喜・達成感」へと変わっていく。CYTが準備してきたものは、単なる工作キットではなく、人と人をつなぐ時間でした。

メンバーが受け取った学び

活動を終えたメンバーからは、さまざまな振り返りがありました。

石田さんは、組み立ての難易度が想像より高くなったこと、印刷時間やコストなど設計以外の部分も考える必要があること、そして多くの人の創意工夫を見ることができたことを挙げました。中谷亘佑さんは、「設計上は完璧に見えても、実際に作ってみると問題点が多い。試作は大事で、繰り返すことでいいものを作っていける」と振り返りました。

設計する。作ってみる。人に使ってもらう。課題を見つける。もう一度直す。

この繰り返しの中で、CYTは教材を改良しただけでなく、ものづくりのプロセスそのものを学んでいきました。

CYTの挑戦が教えてくれたこと

今回の取り組みは、若手が中心となって、企画、設計、試作、改良、実施、振り返りまでを担った活動でした。

そこには、決められた作業をこなすだけではない、主体的な協調性がありました。一人ひとりが自分にできることを考え、専門や経験の違いを持ち寄り、目的に向かって動きました。若者が本気で挑戦できる場があれば、技術も、マインドも、チームでやり抜く力も育っていきます。CYTの取り組みは、そのことを私たちに示してくれました。

メイカーズクラブは、これからも若手会CYTとともに、ものづくりを通して学び合い、次の世代へつながる活動を育てていきます。

関連情報

実施日: 2025年12月6日
事業名: からくり人形に学ぶ日本文化体験ワークショップ
共催: KOKORO-NET in KOBE、NPO法人メイカーズクラブ若手会CYT
協力: 神戸大学グローバル教育センター
発表資料: CYT活動報告会2025
発表: 武山実奈、石田大輔、中谷亘佑
取組参加: 藪淑乃、北条瑠奈、中谷允則、伊丹瑞稀、広嶋謡

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著者プロフィール

技術者を夢見る、ものづくりの好きな小中学生を対象に、自分で考え工夫する頭と専門知識につながる基礎の基礎を学べる工作体験、そして、技術者との交流による心と夢の成長の機会を提供しています。 こどもたちが、自分の工夫と試行錯誤いっぱいの工作体験で、人生を幸せに生き抜いていくための、「自分の頭で考える力」と「タフな心」を楽しく身につけていけるよう手助けをする、工作支援の活動です。 親子で、みんなで繋がって「好き」と「みらい」をつなぎ育てていきましょう。