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【コラム】念願の技術雑誌「模型とラジオ」を蔵書に加えて思う、原理原則からの学びの楽しさ

この記事は約8分で読めます。
今回、Maker’s Clubの蔵書に加わった、1963年,1964年の全巻24冊の技術雑誌「模型とラジオ」は、こどもたちの学びのあり方、ものづくりの楽しみ方について、多くことを私達に伝えてくれています。
敷かれたレールなど無くなってしまった不確実な社会を生きるこどもたちが、ミライでイキイキと幸せに暮らすために、Maker’s Clubが、いえ、私達大人ができる、大切なことを教えてくれています。
こどもたちに、「なぜそうなるのか?」の理由を、原理原則、基礎基本から、きちんと理解することの大切さと楽しさを知ってもらうことが大切です。そのこどもたちの好きな何かをとことん、原理原則、基礎基本から究める体験を支援することが大切です。

こどもむけ技術雑誌「模型とラジオ」が伝える「好奇心を究める楽しさ」

「1年間分の技術雑誌を読んでいると、その世界が見えてきます。」

ある技術者の方から、「1間分12冊ぐらいんでいると、そ世界が見えてきます。」という名言を頂きました。それで、こども達に学んでもらうための教材(学材?)を作るため、知りたい世界の雑誌1年間分12冊を、少しずつ読み進めています。

「原理原則から学び究めるということは、具体的にどういうことだろう?」

「どのような学習教材が原理から学び究めることを支援できるのだろう?」

そんな中、「おぉ!運命!」と感じる雑誌の表紙を見つけました。

(株)科学教材社発行の「模型とラジオ」1964年1月号です。

全て自作の模型工作。自作と自作で、自作を動かす!

下の写真の左側の雑誌、(株)科学教材社発行の「模型とラジオ」1964年1月号の表紙、何かわかりますか?

 

自作ラジコンの送信機と自作ラジコン受信機を使って、自作バスを遠隔運転する」ための模型工作です。

全部自作のリモコン自動車セットの作り方がこの雑誌に載っているのです!!

Maker’s Clubの蔵書に新たに加わった雑誌は、

「模型とラジオ」1963年1月号~12月号(株)科学教材社発行
「模型とラジオ」1964年1月号~12月号(株)科学教材社発行

です。

1年分12冊が連続して2年分です。

そうです、「1年間分の技術雑誌を読んでいると、その世界が見えてきます。」です。

この24冊の技術雑誌「模型とラジオ」を読み込んでいけば、もちろん、作りもすれば、模型工作の世界が見えてくる、はずです。

昭和の高度経済成長期のこども達が読んだ技術雑誌が伝えてくれること

えらく傷んでいるな、、、とお思いですか?

高度経済成長期(1955年~1973年)のものづくりの好きなこども達が、この雑誌を手に取って、記事を読み、楽しく作って遊んだその日常のそばに、この雑誌があったのだと思います。

写真で分かるように背表紙の上部、下部が茶色く変色しているのは、セロハンテープを貼って、雑誌を補修しているからです。私は、これに心動かされました。セロハンテープは、手に取ると、パラリと剥がれてしまうものもあり、かなり昔に修繕したことが分かります。また、8月号などは、開いた時にできたと思われる折線が入っていたりして、この雑誌を読んだ、中学生(だろうと思う)が、夏休みにこれを見ながら工作をしたんだな、、、と、思わず顔がほころんでしまいます。

全体に古びているにもかかわらず、中身はほとんど傷んでおらず、大切に読んだのだなということも感じました。

このような雑誌を、Maker’s Clubの蔵書に加えることができて、本当に幸せだと思うし、これを手に取って読むことのできるMaker’s Clubのこどもたちは幸せだと思います。

原理原則から学び、技術の知識とスキルを身につけていくであろう、ミライの自分の夢に繋ぐMaker’s Clubのこどもたちに、その心をもこの雑誌が伝えてくれると思います。

※もし、お手元に、Maker’s Clubの小中学生のこどもたちにと寄贈頂ける模型工作の技術雑誌や書籍がありましたら、どうぞ、お問合せフォームからご連絡ください。大切に活用させていただきます。

全自作のリモコンバスの工作記事

「自作ラジコン送受信機を使ったラジコンバス」、模型とラジオ、1963年1月号、pp.65-73、(株)科学教材社。

全自作のリモコンバスの工作記事は、どのようなものでしょう。

B4サイズの折込ページ1面のラジコンバスの設計図と、B4サイズの設計図の裏面から、説明が始まり、続く5ページを使って、バス本体作り方、動力部、受信器とサーボの組み込みが詳しく書かれています。

特に、素晴らしいのは、単に、作る手順の説明にとどまらず、パーツの諸元や役割と機能の仕組み(例えば、送信機のボタン操作に対して、そこからどのような信号が出て、その信号を受けて、サーボモータがどのように動き、結果として、バスがどのように走るのか、等)を伝えています。バスも形を作るだけでなく、塗装作業の説明もされています。写真はほとんどなく、すべて手描きの図です。

本当に、記事を書いている技術者がそばにいるかのように感じます。

このバスは、「日野ディーゼル中型バス RM100型 27分の1モデル」だそうです。さすが、今も昔も、モノづくりの好きなこども達は、ホンモノにこだわります。

共通点を見つけて、愉快な気持ちになりました。

自作のラジコン送受信機の記事は、どこに?

ふむふむと、ラジコンバスの模型工作記事を読んでいて、ふと、

「自作のラジコン送受信機の作り方は、どこ?」
記事をよく見ると、大きな文字でこうあります。
「昭和38年8月号の自作ラジコン受信機」と
「昭和38年10月号の自作ラジコン送信機」を使用した
ラジコンバスの作り方
「え?!昭和38年って、西暦何年?!」
ご安心ください(、私)。昭和38年は、西暦1963年。
Maker’s Clubの蔵書に加わったのは、1963年と1964年の全巻です!
送受信機の記事も手元にあるのです!
「トランシーバーでも働く 3石式自作ラジコン受信機」、模型とラジオ1963年8月号、折込4色ページ、(株)科学教材社。
「2石式自作ラジコン送信機」、模型とラジオ1963年10月号、折込4色ページ、(株)科学教材社。
確かに、ありました。折込ページは、A4サイズより一回り大きい位の大きさです。表面に回路と実体配線図、裏側にびっしりと説明文があります。もちろん、説明文は、回路の意味についても触れられています。

ラジコンの模型工作本で垣間見える、昭和の子供たちの楽しい遊び

この記事にワクワクが募った私は、昭和のこども達の「ラジコン技術」の学びに興味を持ち、近くの図書館から、次の本を借りてきました。

増永清一著、
「図解 ラジコンの設計 送信機・受信機の製作」、
昭和53(1978)年6月、誠文堂新光社。

懇切丁寧に、全自作ラジコンの様々な工作が掲載されています。

本の貸し出しカードに見る、昭和のこども達のものづくりの動き

私が見入ったのは、本に貼り付けられている「貸し出しカード」です。

「図解 ラジコンの設計」の借出数の変化
年度借りられた回数
昭和54(1979)年(※)3(7月開始)
昭和55(1980)年10
昭和56(1981)年16
昭和57(1982)年15
昭和58(1983)年14
昭和59(1984)年0
昭和60(1985)年2

昭和55(1980)年~昭和58(1983)年は、毎月のように借りられています。夏休みに3回も借りられていたりして、人気ぶりがうかがえます。

それが、昭和59(1984)年から、借りられる回数が激減しています。図書館側に何か事情があったのか、貸し出しカードが電子化されたのか、詳細は不明ですが、昭和58 (1983) 年は、「ファミリー・コンピュータ」発売の年で、空前の大ヒットになったことと関係があるのではないかと、私は考えています。

ちなみに、この昭和58 (1983) 年の「ファミリー・コンピュータ」発売以降、昭和61 (1986)年 ファミコンソフト「ドラゴンクエスト」発売、昭和63 (1988) 年「ファイナルファンタジー」「ドラゴンクエスト3」などのテレビゲームソフトが大ヒットし、平成 1 (1989)年に「ゲームボーイ」、平成 2 (1990)年に「スーパーファミコン」が発売されます。その後、平成 6 (1994)年に32ビットテレビゲーム登場、平成 8 (1996) 年「NINTENDO64」、ゲームボーイソフト「ポケットモンスター」が発売されて行きます。

今の子供たちに伝えたい「好奇心を究める楽しい工作」

今回、Maker’s Clubの蔵書に加わった、1963年,1964年の全巻24冊の技術雑誌「模型とラジオ」は、こどもたちの学びのあり方、ものづくりの楽しみ方について、多くことを私達に伝えてくれています。

敷かれたレールなど無くなってしまった不確実な社会を生きるこどもたちが、ミライでイキイキと幸せに暮らすために、Maker’s Clubが、いえ、私達大人ができる、大切なことを教えてくれています。

こどもたちに、「なぜそうなるのか?」の理由を、原理原則、基礎基本から、きちんと理解することの大切さと楽しさを知ってもらうことが大切です。そのこどもたちの好きな何かをとことん、原理原則、基礎基本から究める体験を支援することが大切です。

Maker’s Clubの蔵書には、

小学生・中学生向けの技術雑誌
「子供の科学」(誠文堂新光社)昭和52(1977)年の1年分全巻12冊

もあります。他にも、バラバラの年月のこども向け技術雑誌や書籍が蔵書としてあります。

これらの記事がこどもたちに伝えたこと、伝えたかったことを、Maker’s Clubのこどもたちに伝えていこうと思います。

中谷敬子

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