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【コラム】匠ヨット模型がこどもメイカーに与えたもの

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船の美しい模型。船にはあまり馴染みのなかった工作好きのこども達は「なんだろう?」の気持ちで集まりました。「質問すること』、分からないと伝えることは素晴らしいこと」という共通理解を持つための、語り合いから始まりました。
質問と疑問が歓迎される安心・安全、こどもたちだけの世界で、こどもたちは、誰に気兼ねすることもなく、好奇心のままに自由に、見て、話してをしました。
匠メイカーのヨットの模型は、こどもたちに、「好奇心と夢を膨らませ、仲間と共にそれを共有し広げる喜びの体験と時間」を与えてくれたと思います。

匠からのヨットの模型で、こども達が学んだこと

Maker’s Clubは、工作体験のプロセスが、こどもたちの夢を掴むための心を育てると考えています。7月に匠メイカー作の「ヨットの模型」を通じた、こどもメイカーたちとの1か月間の交流が、こどもたちに何を与えたかを振り返ってみます。

匠メイカーは、ヨットの模型を作ってくださいました。

完成品の模型に、こどもメイカーが何を見つけ、どのように関わり、そこから何を学んだのでしょうか。

工作の楽しさ、工作対象の船への興味関心と知識については、別の機会に扱います。
ここでは、「夢へつながる心(マインド)とスキル」に着目して考えてみます。

匠と、こどもメイカーの交流の歴史

匠メイカーの作ってくださった「ヨットの模型」を通じた、こどもメイカーたちとの交流ヒストリーをまとめてみました。

匠メイカーの「ヨットの模型」の製作途中と完成の写真が届きました。

こどもメイカー達が、オンライン会合で、見て楽しみ、しりたいことを出し合い、「おたずね」をまとめて、角谷さんへ送りました。

こどもメイカーからの「おたずね」に、匠メイカーから「お答え」と、ヨットの模型の実物がMaker’s Clubに届きました。

匠メイカーの回答と説明を読みつつ、実物模型をみながら観察するオンライン会合をこどもメイカーたちが開きました。

ヨットの模型は、オンライン会合で「水に浮かべてみたい」といった、大工が夢の小6の男の子がもらい、彼は、模型を入れるためのショーケース作りに取り組んでいます。

匠が模型を送ってくれてから、こどもたちは1か月かけて、その模型の周りで、色々な体験をしたことが分かります。そのうちの一人は、今も、ヨットの模型を飾るためのショーケース作りという形で体験を継続中です。匠から模型が届いたこどもたちは、それぞれに、知っていることや疑問を持ちました。

船は、車、自動車、または、飛行機に比べて、こどもたちにとっては馴染みの無い場合が多いように思います。日常的に船を利用する機会は、ほぼないでしょうし、海(や、大きな湖)に行かなければ、船を実際に見ることは少ないでしょう。こども達は体験から学びます。体験から興味関心を持ちます。日常の暮らしに無い船という題材を扱ったヨットの模型は、工作好きということ以上に、こどもたちの好奇心を刺激したに違いありません。

好奇心を持ったこどもたちは、早速「あおう会(※1)」を開いて、ヨットの模型の写真を見ながら、語り合いました。

(※1)あおう会;Maker’s Clubのこども達が定期、不定期に、集まる(主にオンライン)会合。目的は、都度都度、事前のLINEやメールのやり取りで決められる。当日までに見せたい工作や工作で困っていることの相談は毎回含まれている。

その中で出てきた、疑問をまとめて、「おたずね」として、匠へ送りました。匠は、それに答えて、一つ一つの質問に丁寧に解説文を書いて届けてくれました。

そして、その匠メイカーの回答と説明を読みつつ、実物模型をみながら観察するオンライン会合をこどもメイカーたちが開きました。

模型をみることと製作者との交流体験が、引き起こしたもの

工作をせずに、完成した作品を見るだけの体験は、「仲間同士の交流」と「技術者との交流」によって、こどもたちに大きな影響を与えました。

模型がこども達に起こした体験は、図1のように整理されます。

結論から言えば、子供たちにとって、未知のものに触れる「ヨットの模型を楽しく見る」体験は、「好奇心を自由に思う存分味わい楽しんだ」体験でした。

具体的には、「仲間との質問・議論のコミュニケーション」、「好奇心を受け止めてくれる技術者の存在を知る」体験でした。

匠メイカーと、ヨット模型と、こどもメイカーとの相互作用

模型を、同じ興味関心を持つ仲間と一緒に見ることは、彼らの間のコミュニケーションを引き起こします。

こども達は「質問する」ことが苦手です。そこには、「恥ずかしい」「怖い」「非難していると思われる」など、様々な気持ちが有ります。

ヨットを見ようのあおう会の中でも、「質問は、避難や批判ではない。むしろ喜ばれることなんだよ」という説明に、あおう会の最初の時間を使いました。

質問することを「相手の間違いを指摘している」、「相手責めている」と捉えられる、遠慮してしまうこども達もいます。

(1)「質問することはステキなこと」と体験から知る

学校などの、多人数での学びでは、こどもたちは、時として、好奇心を出し過ぎると、叱られてしまうことがあります。ある領域にずば抜けた強い好奇心と高い集中力を持つこどもたちは、好奇心からの言動をなんども、たしなめられる経験を重ねていることが多いです。好奇心の強いこどもが、「何でも聞いていいよ」と大人に言われて質問したのに「もうやめなさい」と言われる気持ちは、悲しみと疑いに満ちるだろうと思います。「質問はありませんか?」と言われて慎重になるのはある意味、日々の体験からの間違った刷り込みなのです。

安心安全の場所で、好奇心を自由に全開で発動していい、そういう場所がこども達には必要で、ヨットの模型が運んでくれた一連の体験は、「質問は素敵なこと」ということを、体験から知ることができた貴重な機会となりました。

(2)安心の中で好奇心を解き放つ議論の体験をする

同じ興味関心を持つ、もし何かがあっても仲直りできる仲間と、「失敗は成功アイテム」文化を理解しているMaker’s Clubと親御さんや大人達に囲まれて、安心・安全の場で、悠希 を出して、「質問(議論)」コミュニケーションに取り組みました。

(3)好奇心を受け止めてくれる人との交流を体験する

こどもたちが、「知りたいこと」を模型を作った人に伝えることは、少し勇気が必要だったと思います。「知りたがり屋」で叱られた体験を持つこども達ですから。

しかし、匠メイカーは、もちろん、丁寧な回答を返してくれました。

これは、大変大切な体験でした。

匠メイカーは、こども達の好奇心からの質問に「答えた」だけではなく、好奇心に「応えてくれた」のです。

ヨットの模型とこども達の好奇心の育ち

ヨットの模型が届いてからの、匠メイカーとこどもたちのやり取りを、「こどもたちの好奇心」の切り口からまとめてみました。

  1. 模型を見たこども達が、好奇心を持つ。➡好奇心のめばえ
  2. こども達が、好奇心を共有できる仲間と集まって、自分の考えを伝えあう。➡発見と疑問を仲間と共有
  3. 分からないこと、知りたいことを、匠メイカーに問い合わせる。➡好奇心を満たすための他者への発信
  4. 匠から質問への返事が届く➡好奇心に応えてくれた他者への信頼
  5. 好奇心をどのように使うか、育てるかを体験的に学ぶ➡好奇心を究める方法を知る

ヨットの模型に触れて、好奇心を芽生えさせ、その好奇心を仲間とともに膨らませ、共有して、好奇心を満たすために「おたずね」メールの発信という具体的な行動をし、その行動に、知識の面からも心の面からも答えてもらって、知りたかったことを喜びのうちに仲間と共に共有して、好奇心を満足させる。

彼らは、自分の中の好奇心を、どのように膨らませ、発展させていけばいいかの体験をしました。必要であれば、他者を信頼して、自分の気持ちを伝えて大丈夫なんだ、自分の目的のために、他者はいつでも応援してくれるんだということを体験から学びました。

(Maker’s Club 中谷敬子)

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